2011年11月20日日曜日

MSさんの提言 日本版みどりの党「みどりの未来」に関して


現場からのレポート「一研究者の見た"みどりの未来"①」

11/19正午、私は大阪・中崎町近くの市営ホール・アクト3に向かっていた。
日本版みどりの党「みどりの未来」が、
ドイツ緑の党員・ジルビア・コッティング・ウールさん
を迎えてフォーラムを行うからである
全体で七時間に及ぶとてつもないフォーラムである。
こんな地味、長時間の会合に(おまけに大雨)誰も来ないだろうと高を括って会場に着いてみると、主催者側もそのように推測したのか収容50人程度のこぢんまりしたホールである。

主宰者と名刺交換などして語り合っているうちに
開始時刻の一時となった。
ここで驚くべき事が起こった。
次々と人が入ってくる。そして30分前はまばらだった会場の席は
ほとんど埋まってしまった。

私はこういう会合では、議題がどうとか結論がどうなるか、
という事よりも、マンウォッチングをする事にしている。
口では色々な事が言えるが、
表情は人々の生活史と本音を語って偽りないからである。
この50人弱の人達を見て、まず感じたのは、
皆見た目は普通のおじさんおねえさんだが、
市民運動に何らかの関わりを持っている関係者ではないか、
という印象である。
「目」が違うのだ。
一時の時点での参加人数は47人。
あくまで外見だけで判断した年齢構成は
・高齢者   20人
・団塊の世代 11人
・青年層   16人
男女比は女性10人、男性37人で、圧倒的に男性が多い。

服装などはてんでにバラバラで、スーツで決め、
難しい顔をしている「アカデミズム系」とおぼしき人から
「悠々自適」を漂わすブルゾン姿の高齢者まで、多種多様である。







現場からのレポート「一研究者の見た"みどりの未来"②」

-議論白熱-

参加者には、全36Pの、団体パンフレットが渡され、
ここにみどりの会則や、政党設立への目標も書かれている。

‎みどりの未来・基本理念とアジェンダ  [そのまま転載]
このサークルで私が理想としている事とオーバーラップする部分もあり、
ベーシックインカム等については質問もいろいろしてみたが彼等自身まだ研究中で答えきれずという場面もありで、
関わり方としては是々非々という感触であった。

[6つの理念]

エコロジカルな知恵

社会的公正・正義

参加民主主義

非暴力・平和

持続可能性

多様性の尊重

[12のアジェンダ]

脱原発と再生可能エネルギーへの全面的な転換 

ケア・食糧・カネは地産地消

食糧自給率アップ 

ベーシックインカムの導入 

ワークシェアによる雇用確保

税制改革 

シングル社会と多様な家族 

多文化共生のフェアな社会

誰でも立候補できる選挙制度 

住民自治の徹底 

北東アジアの共生

公正と連帯のグローバル社会


みどり、の理念・アジェンダ(政治課題)は別掲した通りだが、
れだけ見たらいわゆる「お花畑」である。
3.11以前の日本人が見たら、
「あなた方頭がおかしいんじゃないですか」
という内容・美しい理想がちりばめられているのだ。
論、みどりの扱っているアジェンダの理念的な部分は、
私の文明解体論と多く重なるように見える。
しかし、「もらえるもの」については多く書かれているが、
「何を犠牲にするのか」については言及がない。
また、政治的根拠となる統計データがほとんど書かれていない。
これでは議論のしようがないだろう、と少々危険を感じてしまった。

この私の当惑は、後の議論で白熱することとなる。

みどりのパンフをラフに要約すれば、脱原発は当然として、
成長はせず、国民一人一人に月額10万円の基礎所得を無条件給付し、
加民主主義によって夢のような政治が実現する、という事になる。

さて、いよいよフォーラムが始まった。

政党、という概念を解体する試みである "Greens" の歴史と、

底辺民主主義のコンセプト説明で始まり、
4名の共同代表が、それぞれ
「脱原発」

「脱経済成長」

「ベーシックインカム」

「参加民主主義(面白い言い方をするものだ)」

について説明をすることになっている。

驚いたのは、
この統計解析も十分に行われていないであろうお花畑で、
2013年つまり二年後の参院選に議員を送り込もう、
という決意表明が最初にアナウンスされたことである。

私が

「地球と文明」
で行っているトライアルもかなり理想主義的だが、
ここまで確信犯的にやられると却って楽しい。


現場からのレポート「一研究者の見た"みどりの未来"③」

-議論白熱、というかカオス?-

高石市議会員の松尾さんが立て板に水の司会で概要説明を終えた後
ドイツのジルビアさんがドイツの脱原発運動について解説。

このパートの質疑応答は
一次データのある話なので実にリアルに行われた。
特に自然エネルギーの運営主体等の問題点は、
私が動画で下の欄に投稿しているので見て頂ければわかる。
(ドイツの自然エネルギーもトライアルであり、
彼等の言う底辺民主主義の成功事例として
カウントはできないとわかった)


さていよいよ政策議論である。

結論から言って、

「カオス」だった。

要するに何も決まっていないのである。
その上、明らかに経済論理のバイアスがかかっている。

4つのテーマが終わるごとに、

司会の松尾さんが

「はい、説明が終わりましたので、色々突っ込んでくださいねー」
と水を向ける。

と同時に、皆が挙手して質問を繰り出すという進行だが、
完全にスルーされたり
「今の段階では何ともいえません」といった回答が続出 !。


まず一番目の脱原発

自然エネルギーの位置づけがはっきりしない。

みどりは原発即時停止・廃炉を提言している。

そしてその後、

自然エネルギー比率を30%に引き上げて
CO2排出を削減するという目標を立てている。

CO2問題そのものが、
クライミットゲートで明らかにされたように利権問題である。
だから、自然エネルギーを30%に引き上げるという動機も

統計的根拠も不明だ。なぜ30%なのか。

そこで私は、自然エネルギーの設備開発には多量の資源を浪費するし、
エネルギー効率も悪いので、
そんなにエネルギー需要が逼迫するなら高効率・低コストの
ガスコンバインドサイクルをなぜ使わないのか、
と質問したところ、
「現在日本の電力供給が火力と水力でほとんどまかなえるので、
採掘時にかなりの環境破壊を伴う天然ガスによる発電は考えていない」
との事。
(電力が足りているとわかっているなら、
ますます自然エネルギー設備など不要である)

そこで、逆方向から攻めてみた。

「太陽光パネル製造に必須のレアメタルは
放射性物質であるトリウム汚染を起こしているが、それは問題ないのか」と言ったら見事にスルーされた。(笑)

現場からのレポート「一研究者の見た"みどりの未来"④

政策2の
経済成長をやめて環境と雇用・生活を守る、という議題は
高度成長期以来、国民の幸福感が変わっていない、
という別添のようなデータに基づいている。
みどりは主張する。

●オカネがなくても幸福な社会を実現できるようにしよう。
そりゃ素晴らしい。この点については大賛成だよ。
折角そこまで行ったのでから
ついでに貨幣経済もやめちゃって下さいよ、私が提案しているように】
●主に外需に頼ってきた経済成長が問題であり、
内需拡大(福祉産業・自然エネルギ ー開発等の市場拡大)で
雇用と生活は守れる。と。

なるほど。
自然エネルギーが内需拡大のひとつのキーワードになっているのなら、
その利権確保は前提だよなー、と思う。

これはみどりの理論のひとつの基本である地域内乗数効果(http://www.jca.apc.org/nnpp/nakayama/LocalGreenNDbyMashimo.pdf)を適用したものである。
だが、私が疑問に思うのは、
福祉にしても自然エネルギーにしても
完全に閉鎖系経済圏としての内需拡大なんてものはありえない。
そういう時代は「江戸」で終わったのだ。

少子高齢化の中、
福祉産業を成立させるにはケアマネージャーは
ンドネシアやベトナムの人達にお出でいただくしかあるまい。
また自然エネルギー開発は、
国外資源収奪、自然破壊、石油の消費、という点で
極めて在来的な構図であり、経済における相互依存性を無視している。

早々に論理が矛盾しているので、
時間の無駄と思い質問するのも撤回してしまった。
http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis190/e_dis182_01.pdf
現場からのレポート「一研究者の見た"みどりの未来"⑤

さて三つ目、

私もここで提案している

ベーシックインカム」である。

これは、年金や生活保護など分化している社会保障制度を
「基礎所得保障」
に一本化する試みであり、比較的歴史的には古い提案である。

みどりの試案では、

一律月額10万円を国民に支給し、
最低限の生活を保障する、という。
いいではありませんか。是非やってもらいたい。

ちなみに現在社会保障関係で

・現在生活保護受給者 200万人

・年金受給者     2592万人

・失業者        85万人

・児童手当受給者   1290万人

・その他もろもろ 

のオカネが実際に支出されており、関係官庁の人件費なども膨大だ
ベーシックインカムでまとめてしまえば不要な役所業務もカットできる。
実現できるのではないかという議論があるのは確かである。

これには、議論が白熱した。
「皆が働かなくなるので、反対です」というブラジル在住という女性。
(実はベーシックインカムを導入すると皆働くようになる、
いう説もある)

「財源をどうするのか」という質問。

ベーシックインカムで問題になってきたのは、主に財源論である。

例えば小沢修司の試算では、
一人月額8万円の支給として、総額115兆円の財源が必要となる。

みどりは、これを税負担で賄う、としている。

特に強調しているのは税の公正負担で、
所得税の累進課税強化、
法人税の税特別措置の撤廃、
金融課税、

相続税の強化などを挙げている。
日本の賃金労働者の搾取は、
企業の内部留保の大きさに問題があるのだから
特に法人税の強化は歓迎・・・だがちょっと待った。

「一人当たり10万円にするためには
消費税の増税も必要かと思います。」

このデフレで消費税増税はありえないでしょう。
まあそのための自然エネルギー開発・産業活性化
なのかもしれないけれど。

そこで突っ込みを。

「8万円を10万円にするために
例えば消費税増税ということですけれども、
消費税増税は間違いなく消費を減衰させます。
財源論でよく論じられている政府通貨の発行といった政策を、
まず選択肢として考慮すべきと思いますが」

と・・・反応がない。
どうも、政府通貨発行、
という政策を知らなかったようなのである。(!?)

そして最後は、
「ええっと、財源についてはまだ色々と検討中であったりしまして
そもそもベーシックインカムは私達の政策では 
"実現できたらいいな" というレベルのもので、
脱原発などが政策としては最優先されていますので。」

ではぐらかされてしまった。

それはないでしょう

それなら最初から政策にこういう優先順位をつけています、
とパンフレットに書かないとルール違反でしょ、
と心で思って口には出さず。

現場からのレポート「一研究者の見た"みどりの未来"⑥

いよいよ最後だ。

「おまかせ民主主義にサヨナラ」という政策である。

日本の民主主義が真の「民主制」として成熟していない事は、

今回皆が認識した。

て、パンフを見てみると素晴らしい事が書かれている。

①情報公開なくして民主主義なし

②熟議なくして妥当な決定なし

③民意が届く決定システム、特に直接投票の導入

私のサイトでも、

民主制の確立のためには

間接民主制と直接民主制特に直接行動の重要性を主張してきたから、
これはかなりの部分共有できるイデーである。

ところが・・・・この三原則

みどりの人達が意識してスピンしているのか、
全然思いが至っていないのか、
民主制を機能させるための重大な要件が一つ抜け落ちてませんか?

そう、まさに主である民の「義務」ですね。

この間から、「地球と文明」で議論している

「愚民」

の話は、まさに民主制の中から全体主義が生まれた歴史を咀嚼して
私達が主になるためにどのような努力が必要か、という論点だった。

みどりのパンフには、その義務の内容が全く書かれていなくて、
民主制に参加する、とは責任を引き受ける事」
と最後におまけしてあるだけ。

これはスピンだ。

質問で「なぜわざと書かないのか」と言っても生産的でないので、
ここは提言の形にする。

「この三原則は、

民主制が実現したらこんな果実が与えられる、
いう受益者の立場で書かれていますが、
権利を手に入れるという事は義務の裏返しです。
私達は享受する前に果たすべき主権者の義務
例えば絶え間ない様々な領域の学習と市民意識の向上、
ヒューマニズムの発想を実践すること、などがあるはずです。

これらを具体的に明らかにされないと、
ただの愚民政治になるだけで、
結局おまかせ民主主義と変わらないのではありませんか」

と述べた。

きっと嫌われたと思う。(爆)

現場からのレポート「一研究者の見た"みどりの未来"⑦

というわけで・・・なかなか面白い "みどりの未来" 。

理想主義者と言われている私としては入会してみることにした。

お花畑大いに結構。このドラフトの精神のままで、
日本の改革まで「特攻」できたら大した社会実験である。

打ち上げで、色々「会議中には見えなかった裏の力学」なんかも
間見えた。
とりあえず「市民としての良識的なスタンス」を保って
是々非々で関わっていこうと考えた次第である。

現場からのレポート「一研究者の見た"みどりの未来" 番外編①

先に、"私はこういう会合では、議題がどうとか結論がどうなるか
という事よりも、マンウォッチングをする事にしている。" と書いた。
スピーカーが誠実に話しているのか、
真実を語ろうとしているのかを表情やしぐさで判断しようという、
大変本能的な行動をとるのだ

ところで、後半のジルビアさんの話で、本人の話し方からも、
計画そのものの合理性からも、両面で「ちょっと危ないな」という計画を聞いたので書き付けておく。
ひょっとすると、小さな話題かも知れないが、
こんなところから現在のエコビジネスの本性が明らかになるかも知れない。

それは、Desertec計画である。→【参考資料】
ファイル:DESERTEC-Map large.jpg

概略を言うと、広大なアフリカの砂漠に太陽光システムを設置し、
送電線を介してヨーロッパに給電するという壮大な "自然エネルギー" プロジェクトである。
既に開始しており、2050年を目処にヨーロッパ全土に電力供給する、という。

不安を感じたのは、ジルビアさん自身の態度に
「自信と誇り」に満ちたものを感じなかったからである。
それがずっと、心にひっかかっていた。
極めて非論理的な話ではあるが、私のこの手の予感は結構あたるのである。

ロゴスで判断してもおかしい。
受益者が遠く離れたヨーロッパで、アフリカは土地を失うだけである。
この構図は、東京の電力を福島の原発におしつけたのと全く一緒だ
それでは、いくらエコロジーの衣をまとっても、
原発が同じく巨大なソーラーシステムに代わっただけで、自然破壊に変わりはない

これはエコビジネスに名を借りた、単なる先進国のエゴなのではないだろうか。
衣の下に隠れた鎧、のようなものを感じた予感が、
善意と真のエコロジーに基づく計画に対する単なる誤解であってくれれば、と切に願う。

【参考資料】→
http://www.desertec.org/?gclid=COeRoL28xKwCFcYkpAodv1iIqA
www.desertec.org
The non-profit DESERTEC Foundation was founded by committed private individuals. It is the initiator and shareholder of the industrial initiative Dii GmbH.

アフリカの大地で生まれた電力をヨーロッパで消費する事が、

「多文化共生のフェアな社会」「 公正と連帯のグローバル社会」


とどこでどう論理的に整合


するのだろう、さっぱり理解できない。


つくづく先進国? の人々は小賢しい、と感じる

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