2012年2月13日月曜日

甲状腺機能に変化10人「経過観察で再検査を」



10月4日 信濃毎日新聞記事
10月4日の信濃毎日新聞の記事に、この夏JCFが行った福島の子どもたちの健康診断の結果についての記事が掲載されましたのでご報告いたします。



(1面記事)
JCF・信大病院 福島の子130人調査
甲状腺機能に変化10人「経過観察で再検査を」



認定NPO法人日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)と信大病院(ともに松本市)が、福島県内の子ども130人を対象に今夏行った健康調査で、10人(7.7%)の甲状腺機能に変化が3日、分かった。福島第1原発事故との関連性は明確でない。旧ソ連チェルノブイリ原発事故(1986年)の被災地では事故から数年後に小児甲状腺がんが急増しており、JCFは今後も継続的に検査が受けられるよう支援していく方針だ。【焦点3面に】


調査は原発事故から逃れて茅野市に短期滞在していた子どものうち希望者を対象に7月28日、8月4、18、25日に実施。130人は73家族で生後6カ月~16歳(平均年齢7.2歳)。医師の問診と血液検査、尿検査を受けた。
甲状腺は成長に関するホルモンをつくる。今回の調査で1人が甲状腺ホルモンが基準値を下回り、7人が甲状腺刺激ホルモンが基準値を上回った。甲状腺機能低下症と診断された例はなかった。信大病院の中山佳子小児科外来医局長は「現時点では病気とは言えないが、経過観察の必要があるので、再検査を受けるように伝えた」としている。


ほかに、2人の男児(3歳と8歳)が、甲状腺がんを発症した人の腫瘍マーカーにも使われる「サイログロブリン」の血中濃度が基準値をやや上回った。サイログロブリンは甲状腺ホルモンの合成に必要なタンパク質。甲状腺の腫瘍が産出したり、甲状腺の炎症で甲状腺組織が破壊されたりすることで血中濃度が高くなるが、健康な人の血液中にも微量存在する。


原発事故で放出された放射性物質のうち、放射性ヨウ素は、甲状腺が甲状腺ホルモンを合成する際にヨウ素を使うため、人体に取り込まれると甲状腺に蓄積、甲状腺がんや機能低下症を引き起こす。


JCFの鎌田實理事長(諏訪中央病院名誉医院長)は「いろいろ意見はあるが、被ばくの可能性は捨てきれないと思う。継続してフォローしていくのはもちろん、福島の新たな希望者がいれば、健康調査の枠を広げるつもりだ」と話している。



(第3面)
福島の子 健康不安切実
松本のJCF信大病院調査



日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)と信大病院が福島の子どもたちを対象に今夏実施した健康調査。チェルノブイリ原発事故で急増した小児甲状腺がんに直接結び付くデータはなかったが、経過観察が必要と診断された子供が10人いた。福島県では超音波検査による健康調査が10月から始ったばかりで、放射線物質の影響を心配する保護者らの不安を解消するため、よりきめ細かな検査を求める声が出ている。JCF側の取り組みや結果を生かせるように継続的に支えて行く事も必要になりそうだ。


継続的な支え必要 
きめ細かな検査求める声



「毎日が不安との戦い」。長女(6)が信大病院で今回の健康調査を受けた福島県いわき市の栗田明美さん(34)同市は県内他地域より線量が低いとされているが、自前の線量計で計ると、子供たちが遊ぶ鉄棒の下や芝生などの局所的に線量が高い場所が見つかったという。
市や県の健康調査はまだなく、子供の健康状態を「数値として知りたい」との思いで信大病院の調査を受けた。


福島県は県民健康管理調査の一環として今月から、原発事故発生時0~18歳の子ども全員を対象に甲状腺超音波検査を2年ごとに実施。超音波検査でしこりなどの病気が見つかった場合のみ、細胞診採血、尿検査を行う。対象者全員の検査を終えるのは2014年3月の予定だ。


超音波検査は5ミリ以下の小さなしこりも発見できる。ただ、放射能のヨウ素131は甲状腺ガンだけでなく、甲状腺低下症も引き起こす。「甲状腺機能低下症は血液検査でしか分からない」と信大医学部小児科医学講座の小池健一教授。血液検査ですべての甲状腺疾患を見つけられるわけではないが、小池教授は継続的な調査が早期発見につながる可能性を指摘する。


ベラルーシ甲状腺がんの治療に当たった医師の菅谷昭松本市長も「血液検査による甲状腺がんのスクリーニングは難しいが、被爆による甲状腺機能の低下などの変化を調べるためには血液検査は有効だ。もともと内在していた疾患によるものか、被爆の影響かは、経過観察する必要がある」としている。


一方、福島の県民健康管理調査の検討委員会座長の山下俊一福島県立医大副学長は、血液検査については「必要がない」との立場。検査すれば一定の頻度で基準値から外れる値が出るが、比較対象となる健康な子どものデータがないことなどを理由に挙げる。


双方とも医学的には根拠のある主張だ。ただ、平行線をたどったままでは不安を抱える福島の保護者や子どもたちが置き去りにされかねない。原発災害では、あらかじめ非放射性のヨウ素剤を服用しておくと、甲状腺への放射性ヨウ素の沈着を防ぐ効果があるが、福島原発の事故直後にヨウ素剤を服用した子どもたちは限定的だった。
そんな経験を踏まえればなおのこと不安を軽減する努力は欠かせない。


JCFは、福島県内で甲状腺機能を含む血液検査に協力的な病院もあるため、経過観察が必要とした子どもらにはそうした病院で検査を継続するよう紹介する考え。費用負担も検討している。


いわき市の栗田さんは長女に再検査の必要はないとの結果を受け取り、ひとまず気持ちを落ち着けた。JCFの紹介で長男(9)も近く、協力的な病院で血液検査を受ける事にしている。こうした動きは広がる可能性があり、対応は課題として残りそうだ。


チェルノブイリ公表遅れで被害深刻
福島被ばくの実態不透明



1986年4月に発生したチェルノブイリ原発事故では、被ばくした15歳以下の子どもに、甲状腺がんが急増した。
事故を過少評価しているとの批判があるチェルノブイリフォーラム(国際原子力機関=IAEA、世界保健機関=WHOなどで構成)の報告書も、これを認めている。


ベラルーシ・ミンクス医科大のユーリー・デミッチク教授(甲状腺外科)がまとめたデータによると、ベラルーシの15歳以下の甲状腺がんは、1975~85年までの11年間は7人だったが、事故があった86年以降の11年間は508人と、70倍に急増している。


子どもの発症は、事故後4年たった90年から増え始め、95年の91人をピークに減少に転じているのが大きな特徴。これに比べ、青年や若者たちの発症は遅れ、46歳以上はさらに遅い=グラフ。


チェルノブイリでは、旧ソ連の秘密体質で事故の公表が遅れ、屋外で放射能を浴びた子どもが多かった。まだ、内陸国であり、ヨウ素を含む海藻類の摂取が少ないため、慢性的なヨウ素不足の状態にあり、放射性ヨウ素が甲状腺により集中した。


一方の福島県でも、政府が原発事故時の放射性物質の拡散状況を予測するため整備した「緊急時敏迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」が活用されないなど、原発事故への危機管理が十分とはいえなかった。実際にどの程度の被ばくがあったかは不透明だ。


スタッフ

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